グレードNo.1の紅鮭を塩漬けして、
鮭の真の旨みを最大限に引き出した
4年熟成 カナダ産 樽漬け紅鮭 大辛
塩から生まれる鮭の美味しさ
昭和17年に書かれた「鮭鱒聚苑(けいそんじゅえん)」には、鮭を塩に漬けると、脱水作用の他に、適度の醸造作用があると書かれています。保存目的だけではなく、鮭の美味しく食べるために“塩”は欠かせないものだったのです。
北大路魯山人も「魯山人味道」の中で塩鮭・塩鱒の茶漬けについて語っています。今回の塩鮭のように、樽に塩漬けにする製法は、北米では保存用として昔からあったそうですが、それが日本に渡ってきたのは今から30〜40年前のことです。
今回のカナダ産の大辛紅鮭は、飽和塩水に漬けて、無凍結のまま、樽の中で4年もの間熟成させました。
辛い中にも、しっかり鮭の旨みがあります。
400km遡上するカナダの紅鮭
カナダの紅鮭は、太平洋、ベーリング海、オホーツク海を回遊し、4年掛けて成長します。
母川回帰といって、鮭は産卵のために、4年後に生まれた場所に戻ってきます。カナダでは、4年に1度、大量に紅鮭が回帰する「ビッグラン」があり、中でもブリティッシュコロンビア(BC)州の大河フレーザー川の支流、アダムス川に沢山の紅鮭が遡上してきます。
体が紅くなった鮭がアダムス川を上っていく光景は「アダムスラン」と呼ばれており、その遡上距離は約400km。樽漬けに使う紅鮭は、遡上前の魚で、長い距離を泳ぐエネルギーをたっぷり蓄えているので、脂がのって肥えています。
戦後、カナダの日本人移民達と
仕事を共にしてきた
インポーター 協栄商会
明治初期、日本橋に店を構えていた「魚河岸問屋 籾山商店」からのれん分けした協栄商会。昭和12年には、北米の日系漁業者と日本で初めて、筋子の製造・販売を行いました。
しかし、昭和14年に起きた第二次世界大戦により、この提携は途絶えました。
漁業者たちは、カナダの政策により内陸部へ強制移住。
苦しい生活を強いられることなりました。
この事実を知った協栄商会は、昭和24年に駐留軍最高司令部と交渉し、特別に資金給付を受け、筋子の輸入を再開しました。
今回の樽漬け紅鮭も、現地の工場で日系の従業員の方々が作っています。
グレードNo.1の鮭で作る、
樽漬けの大辛紅鮭
協栄商会が選ぶ紅鮭は、鮮度が良い、かつ、傷や打ち身が無く、 ブナ化(産卵に向けて体の色が変化していくこと)の進んでないものに限ります。
毎年、現地の委託加工工場には、協栄商会の社員が立会い、品質をしっかり管理します。
多い日は、10,000尾もの鮭が運び込まれてくる現場です。捌くにしても相当の体力が必要です。現地スタッフは、鮮度が落ちないうちに、素早く丁寧に加工していきます。
原料の選別
鮮度・傷み・体の色など確認して仕分けします。
鮮度を保ったまま
加工
選別後、鮮度を落とさないように、素早く捌き加工します。
現地の塩と水を
入れて
樽詰め
鮭とカナダ産の塩を交互に敷き詰め、最後に水を入れて蓋を閉めます。温度を保ち、無凍結のまま、船で日本に運びます。
紅鮭の旨みが最大限に引き出された4年もの
細胞が生きている状態で樽詰めされた紅鮭は、浸透圧により、鮭内の水分と樽の塩水が循環します。漬けてから3〜4ヶ月すると、鮭全体に塩が回り、身が締まってきます。この時には、鮭と塩水の塩分濃度の均衡がとれ、目方も安定してきます。
更に時間が経つにつれて、タンパク質がアミノ酸に変化し熟成が進み、鮭の旨みがより引き出されます。旨みが増えることにより、「塩かど」と呼ばれる塩の刺激が和らぎ、まろやかになります。仕上がりの塩分濃度は、平均17%になります。
※
余計な水分がしっかり抜けているため、鮭の美味しさがダイレクトに感じられます。
塩鮭を仕立てるプロ
築地日進 干場 誠さん
今回は、築地日進に当社仕様で 特別に仕立ててもらいました。
築地日進は、干物、塩蔵品やいくらや数の子などの 魚卵を中心に仕入れを行っています。
自家製の干物も作っており、料理人にも愛されています。
干場誠さんは、鮭一筋40年のベテランです。
まな板に対して垂直に切ることが干場さんの鉄則
紅鮭の鮮やかな紅い身を見せるために斜めに切られたものをよく目にしますが、干場さんは、断面が真っ直ぐになるように、まな板に対して、ほぼ垂直に包丁を入れます。このように切ることで、表面積が最大限に小さくなり、焼いたときに水分が余計に蒸発することなく、しっとりとした身に仕上がります。
噛むほどに、紅鮭の旨みが出てきます
少しずつ召し上がることをお勧めします。噛み締めるたびに、紅鮭の旨みと脂の甘みが口に広がり、酒もご飯も進みます。魯山人は「煎茶をかけての塩じゃけの美味さはお茶漬け中の逸品」と言います。ぜひ、鮭茶漬けもお試しください。
塩抜きしても旨みは逃げません
塩がきつすぎるときは、塩抜きをしてください。
塩蔵してしっかり旨みを出しているから、 塩抜きしても味は落ちません。水に迎え塩を入れて、 1晩から1日かけて塩を抜いてください。
昨今では、甘口や定塩の塩鮭も多いですが、協栄商会や築地日進は「やっぱり大辛が一番」と語ります。
素材にこだわり、丁寧に時間をかけて生まれる、塩辛いだけではない、鮭の真の美味しさを、体験していただきたいです。
参考文献
松下高,高山謙治[1942],『鮭鱒聚苑』, 水産社
北大路魯山人[1995],『魯山人味道』(平野雅章編), 中央公論新社
文:中村百恵(食文化)