長期肥育能登牛
石川県能登牧場・平林将さんが育てる
石川県能登牧場・平林将さんが育てる
石川県の牛肉ブランド「能登牛」の中で、圧倒的に高い評価を受けているのが能登牧場の能登牛です。
牛肉は一般に広く知られるA5・A4などの等級の他に、肉の色沢・サシの具合・脂肪の色など12段階に分けられた、BMS(ビーフ・マーブリング・スタンダード)という、プロ向けの基準とで評価されます。
能登牧場では生産される牛肉はほとんどがA5、BMSも平均11以上で、さらに良質な脂の証明でもあるオレイン酸の含有量を1頭1頭計測し、脂の口どけ、食べ終わった後の味の余韻、香りまでをも考慮し生産をしています。
品質にこだわるため、肥育日数は通常よりも長く、牧場経営の観点からは非効率と言えるかもしれませんが、この徹底したこだわりにより、後発の石川県内でも能登牧場の能登牛は「指名買いされる肉」として名を馳せる存在となりました。
能登牧場を営む平林将(まさる)さんは、群馬県にある赤城畜産にルーツを持ちます。赤城畜産は、平林氏の曽祖父に当たる逸次郎氏が家畜商として創業し、その後、祖父である誠雄氏が1950年に法人化しました。父である明氏の時代から、群馬で買い付けた牛を石川で販売をしてことがきっかけでこの地に牧場を構えることになりました。
能登牧場は、赤城畜産の和牛飼育の集大成とも言える牧場です。
この地域は世界農業遺産にも登録されており、清潔な水と新鮮な空気が豊富にある自然豊かな環境が広がっています。暑さやストレスに弱い牛を育てるにはぴったりの場所でした。
緑が多く風通しの良い敷地に、
能登牧場の牛舎は建てられています。
自然の風が北から南へと流れるような設計になっています。
暑い日でしたが中は思いのほか涼しい。
データを見ながら牛の状態を確かめる平林さん。
感覚だけでなくデータも重視する。
牛房の1つ1つに換気扇がついています。
牛舎の中に匂いが少ないのに驚きます。
能登牛達に与える餌は、父である赤城畜産会長であった故平林明氏が長年かけて作り上げたものです。米ぬかやとうもろこしを中心に独自に配合したこの餌により、平林さんの目指す理想の牛肉「赤身の味が濃く、脂が甘い肉」に近づけます。この餌が能登牧場の驚異的なA5比率を生み出します。
牛肉の肥育日数は、生育技術の進化と共に短縮され現在では26ヶ月程度の月齢で出荷されるものも出てきました。しかし、能登牧場の牛は、雄で30ヶ月月齢前後、雌は最低でも34ヶ月までの肥育を行っています。
この長期肥育がもたらすメリットは、肉の風味と質感の向上です。特に、「和牛香」と称される甘くナッツのような香りと、より濃厚なうまみを引き出します。私は経産牛(子供を産んだ高齢のメス)がうまみが濃くて好きですが、肉のうまみと香りのバランスをとると必然的に長期肥育になります。
オス牛とメス牛とでは異なる特徴を持ち、オス牛はより濃厚な味わい、メス牛は体が小さい分、緻密な肉質と優しい風味になります。
撮影に使用したのは40ヶ月のメス牛。普通の和牛であれば少々固さを感じる部位ですが、長期肥育のこの牛は緻密でジューシー。肉好きにはぜひ味わっていただきたいです。
「能登牧場の能登牛は雑味がなく海産物にも合う」とのこと。
ウニや甘えびと能登牛を合わせたメニューは絶妙なバランスで確かにうまい。
炭で焼き、肉汁を落ち着かせ、オーブンに入れ、また炭で焼き。。。と繰り返し、じっくり低温で焼きあげます。低温で調理するのがおいしく食べるコツです。
肉の磨き方も違います。
肉を噛むたびに、じゅわりと肉汁が口の中に広がるような最高の状態を目指して、手間暇をかけて肉を磨きます。繊維の方向を見極め、厚さを変えてカットします。職人技です。
1頭丸ごと枝肉で仕入れ、まずは部位ごとにブロックに分けます。その後に脂やスジ取りをし、切り出して店頭にて販売します。
最近人気だという、バラの一部「カイノミ」。大変柔らかく、繊維はざっくりとしています。厚切りで食べるのがうまい。
1頭買いしているからできるバラ肉をあばら骨ごとキューブ状にカットした骨付きカルビ。蛇腹状に切れ目をいれて広げてから焼きます。骨まわりの肉のうまさが堪能できます。
噛みしめる肉を食べたいなら、ウデ肉の一部である「ミスジ」がおすすめです。大理石のような見事なサシが特徴で、よく動く部位であるため程よい弾力があり、うまみも豊かです。
能登牧場の牛に限定して
お届けします
実は、消費者が特定の生産者(牧場)を指定して牛肉を購入するのはかなり難しい作業で、一般的な肉屋やスーパーマーケットではほぼ不可能です。
能登牧場の平林さんは47ヶ月の超長期肥育牛の育成も行っている興味深い方であり、究極の能登牛を目指して長期肥育に力を入れています。
サラリとした脂身と、牛肉特有の甘い香り、そしてうまみたっぷりの赤身が特徴です。さらに野々市ミートの肉職人が部位ごとにカットの仕方を変え、最良の状態でお届けします。
文・井上真一
撮影・品野塁
調理してくださった、
金沢にある肉割烹「登るや」の
道淵哲志シェフ
「能登牧場の能登牛は雑味がなく海産物にも合う」とのこと。
ウニや甘えびと能登牛を合わせたメニューは絶妙なバランスで確かにうまい。